ファイナンス

金利について

昨年末、日銀が10年国債の変動幅の許容範囲を0.25%から0.5%に変更したというニュースが流れました。そして、このニュースを受け、ドル円相場が一気に130円台まで円高に触れ、多くの米国株投資家の資産が減少してしまったのではないかと思います。

世間では

  • 住宅ローン金利が上がるのではないか?
  • 日本も量的引き締めを行う方向に舵を切った?

などという疑問が流れていました。

このニュースを受けて、私自身も金利のことがよくわかっていませんでしたので、今一度ここで整理をしてみます。

住宅ローン金利は上がるのか?

結論としては、

・ 固定金利は上がる可能性が高い

・ 変動金利については直ちに変わるわけではない

ということのようです。

 この辺りを理解するために、まず国債の種類について簡単に整理します。

国債の種類

国債には、償還期間に応じて

・ 短期債(償還期間1年以内の国債)

・ 中期債(償還期間2−5年国債)

・ 長期債(償還期間10年国債(以下「10年国債」))

があります。

 このうち10年国債は、最も安全な資産とされていることから、あらゆる社債(会社が発行する債券)などの金利が(格付けに応じて)決定されます。イメージとしては以下のようなイメージで、最も信頼できる国債が一番金利が低く、その後信頼に応じて社債の金利が決まるという構図になります。

引用: https://management-accounting.biz/yield-curve/ 

そのため、10年国債の金利が上昇すると、他の社債などの金利も上昇し、社債を発行する会社の負担が重くなるため、資金調達の効率が低下します。

 日銀は、10年もの国債を自ら買い入れて需要を(無理やり)作り出したり、資金供給量を増やすことで、10年国債の金利を無理やり下げていたわけですが、そのペースを緩める、ということになります。

固定金利の決まり方

 そして、住宅ローンの固定金利については、長期間にわたる貸出になることから、個人債とも言える性格を有しています。そのため、固定金利は、10年国債をベースに貸出金利が決定されることとなり、10年国債の利回りが上がれば、住宅ローンの固定金利も上昇する関係になります。

 事実、日銀が10年国債の金利幅を拡大してから、主要銀行は、(新規の)固定金利引き上げを決定しています。

大手銀行4行が固定金利を引き上げ

変動金利の決まり方

 変動金利は、「短期プライムレート」という金利に連動しています。

 この「短期プライムレート」とは、金融機関が最も上顧客(プライム)である相手方に対して短期で貸し出す利率(レート)です。

 この短期プライムレートを基準にして、信頼性が劣る分の利率を上乗せしたのが変動金利だと考えてもらえれば良いと思います。

 そして、この短期プライムレートは、さらに「無担保コール翌日物」との金利が参考にされます。この「無担保コール翌日物」とは、無担保で貸し出される、銀行間(コール取引)の1日限り(翌日もの)の取引であり、「オーバーナイト物」などと呼ばれることもあるそうです。

 そして、日銀は、金融機関が有している国債を買い上げ、金融機関の資金需要を満たすことで無担保コール翌日物の金利を誘導するのですが、この誘導目標を「政策金利」などと呼ぶようです。(公定歩合という言葉が死語になっていることに若干の衝撃を受けました。)

・ 短期プライムレート ‥ 金融機関が最も上顧客(プライム)である相手方に対して短期で貸し出す利率(レート)

・ 無担保コール翌日物 ‥ 無担保で貸し出される、銀行間(コール取引)の1日限り(翌日もの)の取引

・ 政策金利 ‥ 日銀が金融機関が有している国債を買い上げ、金融機関の資金需要を満たすことで無担保コール翌日物の金利を誘導する目標

変動金利は上がるのか

 変動金利はそもそも、毎年4月と10月の年2回変更されるもののようですので、2023年4月までは変動することはないということは言えそうです。

 また、現状日銀が政策金利を引き上げてもいませんから、変動金利が上がる、とは断言できませんが、基本的に短期金利は長期金利よりも高くなる(順イールド)ことが基本であることや、日本でも値上げラッシュが続いていて物価が上昇傾向にあることなどを踏まえれば、今後ある程度変動金利も上昇することは避けられないのではないのか、というのがひととおり金利について調べてみた私の意見です。

住宅ローンの支払いに関する特約

住宅ローン制度について調べてみると

・ 変動金利が変わっても5年間は支払い金額が変わらない

・ 変動金利が変わっても、従来の125%以上には支払い額が増えない

といった特約を設けていることも多いそうです。(利子の支払いが増える分、ローン期間終了時点において多額の残金を一括返済しろと言われることになると思いますが)

感想

 アベノミクス以来、マイナス金利が導入されて久しいですが、ようやくこの状況にも変化が出てきそうな雰囲気です。また、色々と調べてみると、自分が過去に学校などで習った公定歩合という言葉がなくなっているなどして、少し驚いたこともありました。

 金利は、ファイナンスの基本なので、今度もアップデートしていかなければですね。